ポータブル電源の安全性や規制について

ポータブル電源は災害時のみならず、キャンプや車中泊、現場仕事などさまざまな場面でとても便利です。

管理人は東日本大震災で被災して「モバイルバッテリーがもっと大きければよかったのに…」と強く思いました。

その後、ポータブル電源が誰でも手に入るような世の中に。ポータブル電源を一家に一台備えて欲しいなぁ、という想いからこのサイトの作成を始めました。

とはいえ利便性の高さの反面、発火事故を起こす事例も多く報告されているなど、安全性については注意すべきと言わざるを得ない状況。

実際、ポータブル電源の購入を検討している際に、その安全性について不安を感じてる方も多いでしょう。

ポータブル電源の発火・火災についてまとめた記事も書いています。

ポータブル電源の火災事件・爆発・危険事象のニュースをまとめています

では、ポータブル電源は普及が進んでいるにもかかわらず、どうしてこのような状態が続いているのでしょうか。

その原因として、いくつか挙げることができますが、なかでも注目すべきはポータブル電源本体は「電気用品安全法」の規制対象となっていないという点。つまり、現時点では安全性に問題のあるポータブル電源が市場に流通するのを事前に阻止することができない状態となっているのです。

アダプター部分は「電気用品安全法」の規制対象になっています。

以下の画像は一例です。この会社が悪いという意味で取り上げたわけではなく、しっかりと明記していて逆に信頼できると思っています。

ポータブル電源のPSEマーク
アダプターだけがPSE認証を受けている

参照:JVCケンウッド公式サイト

この記事は、ポータブル電源の安全性や規制について調べたことを記述しています。

勉強しながら書いているので、完全に正解な文章ではないかもしれません。間違えているところがあればコメントで教えていただけると嬉しいです!

では、「電気用品安全法」について解説をしていきます。

「電気用品安全法」の目的

「電気用品安全法」の目的

「電気用品安全法」という法律の目的として、第一条には以下のように記述されています。

電気用品の製造、輸入、販売等を規制するとともに、電気用品の安全性の確保につき民間事業者の自主的な活動を促進することにより、電気用品による危険及び障害の発生を防止する。

電気用品安全法(経済産業省)

つまり、安全性に問題のある製品の製造や輸入、販売を政府として規制しつつ、各事業者にも自主的に安全性の確保に努めさせることで、危険性のある製品が世に出回ることを多方面から防ぐことが目的、というわけです。

「電気用品安全法」に基づいて行われる措置は、流通前流通後のふたつの段階に分けられています。

具体的な規制内容(製品が流通する前)

具体的な規制内容(製品が流通する前)

まずは流通前の措置から見ていきましょう。

電気用品安全法に基づき、製品が流通する前に行われる措置として「品目指定」「事業届出」「基準適合義務」「表示」「販売の制限」があります。

簡単にまとめると以下のようになります。

品目指定」で指定されている電気用品である以上、電気用品安全法で定められた各規制を受けることになります。その規制とは、「事業届出」と「基準適合義務」を満たし、それを証明する「表示」のある製品でなければ販売できない(「販売の制限」)というものです。

とはいえ、なかなかわかりにくいと思いますので一項目ごとにご説明していきます。

「品目指定」で指定されている電気用品である以上、電気用品安全法で定められた各規制を受けることになります。その規制とは、「事業届出」と「基準適合義務」を満たし、それを証明する「表示」のある製品でなければ販売できない(「販売の制限」)というものです。

品目指定

「品目指定」とは、名称そのままの内容で、規制の対象となる機器を指定すること。

ここで指定された電気用品が「電気用品安全法」の対象となり、事業者は同法で定められた各事項を遵守できなければ製品を販売することができないうえ、製品が流通した後もさまざまな規制を受けることになるのです。

なお、ここで指定されている機器は「電気用品」と「特定電気用品」のふたつに分類されています。

具体的な品目については後述しますが、なかでも「特定電気用品」については「特に危険又は障害の発生するおそれが多い電気用品(参照)」とされ、他の電気用品よりも厳しい規制を受けることになります。

事業届出

次に「事業届出」ですが、電気用品安全法第3条に「電気用品の製造又は輸入の事業を行う者は、電気用品の区分(施行規則 別表第一)に従い、事業開始の日から30日以内に、経済産業大臣に届け出なければならない(参照)」と記載されています。

基準適合義務

そして同法第8条には、こちらの届出を行った事業者はその電気用品の製造、輸入を行うにあたって経済産業省令の定める技術基準に適合しなければならないとも記載されています。これが「基準適合義務」です。

また第8条では、製造や輸入をする際、その電気用品が基準に適合しているかについて「検査を行い、その検査記録を作成し、これを保存しなければならない。(参照)」とも定められています。

さらに「特定電気用品」の場合、販売までに経済産業大臣の登録を受けた者による技術基準適合性検査を受けたうえで、適合性証明書の交付を受け、それを保存しておく必要があると規定されています。

前述の通り、「特定電気用品」は特に危険性の高いものを指していますから、他の電気用品よりも厳しくチェックする必要があるのです。

表示

「表示」は、皆さんもご存じ「PSEマーク」の表示に関する規定です。

電気用品安全法の第10条において、上記の「事業届出」と「基準適合義務」を履行している場合、省令で定められた方式の表示、つまりはPSEマークの表示を付することができると定めています。

このため、PSEマークのある製品は経済産業省の定める技術基準に適合し、安全性が高いことを意味しています。

ちなみに、特定電気用品と特定電気用品以外の電気用品では付されるマークの形が異なります。

特定電気用品の場合、ひし形のマークとなっているのに対し、それ以外の電気用品は丸い形。

なので、ひし形のマークが付いている場合は特定電気用品として指定されていることが一目でわかるようになっています。

販売の制限

「販売の制限」は先ほどの「表示」とも密接に関わっています。というのも、第二十七条において「電気用品の製造、輸入又は販売の事業を行う者は、第十条第一項の表示が付されているものでなければ、電気用品を販売し、又は販売の目的で陳列してはならない。」と規定されているからです。

ここで書かれている「第十条第一項の表示」とは、PSEマークのことを指しています。

つまり、PSEマークがなければ製品を販売することができないと明示されているわけです。

なお、こちらの条項で書かれているのは「表示」についてのみですが、その表示を付するためには「事業届出」と「基準適合義務」を満たしているのが条件。

なので実際には、製品を販売するためには「流通前の措置」として提示されている各条件を満たさなければならないのです。

具体的な規制内容(製品流通後)

具体的な規制内容(製品流通後)

続いて、流通後に行われる措置についても見ていきましょう。流通後に行われるのは「報告の徴収」、「立入検査等」、「改善命令」、「表示の禁止」、「危険等防止命令」といった措置。

簡単にまとめると以下のようになります。

製品が市場に流通した後も、経済産業大臣は事業者に対して業務の「報告」や「立ち入り検査」を行うことができ、基準適合義務や表示の義務等に違反していると判断した場合には「改善命令」や「表示の禁止」、「危険等防止命令」といった厳しい措置を命ずることもできます。これらの措置により、危険性の高い製品が流通し続けるのを防止できるというわけです。

製品が市場に流通した後も、経済産業大臣は事業者に対して業務の「報告」や「立ち入り検査」を行うことができ、基準適合義務や表示の義務等に違反していると判断した場合には「改善命令」や「表示の禁止」、「危険等防止命令」といった厳しい措置を命ずることもできます。これらの措置により、危険性の高い製品が流通し続けるのを防止できるというわけです。

一つ目の「報告の徴収」は、「経済産業大臣は、法律の施行に必要な限度において、電気用品の製造、輸入、販売の各事業を行う者等に対し、その業務に関し報告をさせることができる」というものです。

また、第46条では、「経済産業大臣はこの法律の施行に必要な限度において、その職員に、電気用品の製造、輸入若しくは販売の事業を行うもの等の事務所、工場、事業場、店舗又は倉庫に立ち入り、電気用品、帳簿、書類その他の物件を検査させ、又は関係者に質問させることができる。」と定めています。これが、二つ目に挙げた「立入検査等」の措置です。

さらに、基準を満たしていない事業者に対しては、さらなる厳しい措置を取ることができます。

そのひとつが、「改善命令」です。事業者が基準適合義務等に違反していると判断した場合、経済産業大臣は「改善命令」を出すことができます。

これは、電気用品の製造、輸入、検査方法などに対し、必要な措置を命ずることができるというものです。

また、事業者が基準を満たさない電気用品を製造、輸入した場合や、検査記録の作成・保存義務、特定電気用品の製造・輸入をする際に必要な技術基準適合性検査の受検義務を履行しなかった場合などの際、経済産業大臣は事業者に対して、1年以内の期間を定め、上記の「表示」を付することを禁止することができるとも定められています。こちらが「表示の禁止」です。

電気用品安全法で指定されている電気用品である以上、「表示」のない製品は販売することはできませんから、事実上、「表示の禁止」を受けた事業者の製品はその間、販売停止となってしまうのです。

最後に「危険等防止命令」ですが、こちらは表示のない製品の販売や、基準を満たしていない製品の製造、輸入、販売によって、危険が生じると経済産業大臣が判断した場合、その製品の回収など、危険や障害の拡大を防止するために必要な措置を事業者に命ずることができるという内容です。

規制の対象となっている製品の例

規制の対象となっている製品の例

さて、ここまで電気用品安全法によって行われる措置を見てきましたが、当然、多くの方が気になるのは「どの製品が規制の対象となっているのか」という点のはず。

[st-kaiwa2]ここからは、電気用品安全法の規制対象として指定されている電気用品について、いくつかピックアップしていきます。 [/st-kaiwa2]

最初に、とりわけ注意が必要となる「特定電気用品」について見ていきましょう。「特定電気用品」として規制の対象となっているのは、全部で116品目。

このなかには、「電線類」(ゴム系絶縁電線類や合成樹脂系絶縁電線類)や「ヒューズ」、「配線器具」などが含まれているほか、電気便座や電気スチームバス、観賞魚用ヒーターといった「電熱器具」、電気マッサージ器や電気ポンプ、電気井戸ポンプ、観賞魚用電気気泡発生器といった「電動力応用機械器具」等々も指定されています。

このほかでは、自動販売機や高周波脱毛器、磁気治療器なども「特定電気用品」として指定されています。

このように、商業用に使われる電子機器が多く指定されている一方で、電気便座や電気マッサージ器といった身近な製品も「特定電気用品」の指定品目となっているので注意が必要です。

次に特定電気用品以外の電気用品については、「電線類」や「ヒューズ」、「配線器具」、「電線管類とその附属品」など(特定電気用品と同じ区分でも、品目や条件は異なるので注意)に加え、「電熱器具」などの家電製品を含めた341品目が規制の対象となっています。

具体例を挙げると、「電熱器具」としては電気毛布や電気カーペット、電気こたつなどの74品目、電気冷蔵庫、電動ミシン、ジュースミキサー、扇風機等の「電動力応用機械器具」が134品目、蛍光ランプ、電気スタンド、LED電灯器具といった「光源及び光源応用機械器具」26品目がこちらに該当。

さらに、電子レンジや電子時計などの「電子応用機械器具」(24品目)や、コンセント付家具、電灯付家具等が該当する「交流用電気機械器具」(13品目)も規制対象として指定されています。

ここで挙げたもの以外にも、身近な家電製品が電気用品安全法の規制対象として指定されています。

もっと詳しく知りたいという方は、経済産業省のWEBページで電気用品安全法の対象品目が公開されていますので、そちらを見てみると良いでしょう。

このほか、電気用品安全法の対象のひとつとして挙げられているのが、リチウムイオン蓄電池。これに関連し、平成30年2月1日の改正によって明確に規制の対象となったのが「モバイルバッテリー」です

この改正により、平成31年2月1日以降、PSEマークのないモバイルバッテリーは販売できなくなりました。

規制対象となるのは、【内蔵する単電池1個当たりの体積エネルギー密度が、400Wh/L(ワット時毎リットル)以上のものに限定されますが、PSEマークを付すために必要な義務を満たしていないと販売できなくなったという点は安全性確保への大きな一歩となったと言えるでしょう。(参照:経産省HP モバイルバッテリーに関するFAQ)

ポータブル電源は規制の対象となっているか

ポータブル電源は規制の対象となっているか

冒頭でも書いた通り、ポータブル電源は電気用品安全法の対象とはなっていないのが現状。

実際、経済産業省のWEBサイト内にある「モバイルバッテリーに関するFAQ」というページには、「蓄電池の出力は原理上直流に限られており、交流が出力できるポータブル電源は蓄電池に該当しないため、モバイルバッテリーとして扱わず、非対象」と記載されています。(参照:経産省HP モバイルバッテリーに関するFAQ)

その結果、これまで見てきたような流通前の措置が取られず、安全性に問題のある製品が市場に出回ることを事前に阻止できていないのが現在の状況です。

ポータブル電源は電気用品安全法の対象外となっており、果たしてどの製品なら安全なのか、判断しづらいですね。

まとめ:電気用品安全法の対象外なのでしっかりリサーチしましょう!

では、これまで見てきた内容を確認していきましょう。

危険性のある電気用品が市場に出回ることを防ぐため、事業者に対して製品流通前と流通後にさまざまな規制をかけるのが「電気用品安全法」。

しかし、ポータブル電源はその対象となっていないため、事故を起こすリスクの高い製品を購入してしまう恐れもあるのが現状です。

そこで、ポータブル電源を購入する際はどの製品なら安全に使い続けることができるか、購入者自身が判断しなくてはなりません。

その判断基準として、①安全対策(バッテリーマネジメントシステムやマイクロコントローラユニットなどが採用されているか)、②ポータブル電源に搭載されている電池の種類、③PSEなどの安全基準を満たした製品であるか、④安全性を重視しているメーカーか(アフターサービスにも注目)などが挙げられます。

ポイント

  • 安全対策がされているか
  • ポータブル電源に搭載されている電池の種類
  • PSEなどの安全基準を満たした製品であるか
  • 安全性を重視しているメーカーか

これらの点を入念にチェックするのは手間がかかりますが、ポータブル電源は安い買い物とは言えないものですし、重大な事故を起こさないためにも、購入前にしっかりとリサーチを行い、安心して使用できる製品を選ぶようにしましょう。