ポータブル電源をUPS(無停電電源装置)として使いたい、という方向けの記事です。
UPSには大きく3つの電力供給方式があって、ポータブル電源ごとに採用方式が異なります。
「UPSやEPSがついているからこれでいいかな」とサラッと決めてしまってもいいのですが、より仕組みを理解してから用途に応じた製品を選んだ方が後悔が少ないかと思います。
ポータブル電源の利用をUPS機能をメインに考えている方向けに3つの方式を説明し、用途にぴったりな製品を選ぶヒントを提示できればと考えています。
また、UPS機能搭載を謳っているメーカーさんに問い合わせをして回答があった製品を紹介していきます(2023年上半期現在)。
回答があったメーカー
- Jackery・・・UPS機能対応製品はありません
- Anker・・・UPS機能は3つの方式を製品によって使い分けしている(注1)
- EcoFlow・・・UPS機能を持つ製品はありません(すべてUPSではなく、独自EPS 注2)
- BLUETTI・・・3製品がUPS機能対応製品
- SABUMA・・・1製品がUPS機能対応製品
- EENOUR・・・1製品がUPS機能対応製品
- ASAGAO・・・2製品がUPS機能対応製品
- Zendure・・・2製品がUPS機能対応製品
- Pecron・・・1製品がUPS機能対応製品
ポータブル電源に搭載されるUPSの違いについて

UPS(無停電電源装置)機能には大きく3つの方式(オンライン・オフライン・ラインインタラクティブ)があります。
この項ではUPS方式の説明、それぞれの方式を採用しているポータブル電源をご紹介します。
- UPS(無停電電源装置)機能とは?
UPS(無停電電源装置)とは、停電などの電源トラブルが起きた場合に、一定時間、機器に電力を供給する装置。装置内のバッテリーから電力を供給することで、電気機器を予期せぬシャットダウンから防ぐことができ、機器の損傷やデータの消失といった事態を回避することを可能にする。「Uninterruptible Power Supply」の略称。
- UPSは、停電や電圧低下時に継続的に電力を供給する装置
- 主電源が遮断されると、UPSは内蔵バッテリーに切り替わり、接続された機器に安定した電力を供給
- UPSは、電圧を調整し、電源サージやスパイクをフィルタリングします(形式による)
- データの損失や機器の損傷を防ぎ、ビジネスや冷蔵かなどの家電を中断することなく継続可能
まず、UPS機能の目的は「瞬時電圧低下・瞬時停電の対策、設備を安全に停止する」となります。
停電の主な原因は、雷(一番多い)・台風・大雪・地震など。
UPSが発動して、電力供給を維持するのはUPS機能ではなく、ポータブル電源本来の仕事になります。
守りたい機器によって、UPS方式とポータブル電源の容量・出力を考えていくのが良いですね。
どの方式にもメリットとデメリットがあり、ポータブル電源の容量や出力に合わせて異なる方式を採用しています。
ここでは、UPS(無停電電源装置)の3つの方式について、メリットとデメリットを簡単にご紹介します。詳しくは次項より順次解説をしています。
方式 | 長所 | 短所 |
---|---|---|
オンライン | ・最高レベルの保護と信頼性を敏感な機器に提供 ・バッテリーとAC電源の間の転送時間がないため、停電時に中断することがない ・電圧が安定・ノイズが少ない | ・常時一定の電力ロスがある ・他の方式より高価 ・インバーターを常時稼働させるため、エネルギー消費量が増える |
ラインインタラクティブ | ・オンラインUPSと比較して、より手頃な価格 ・通常時パススルー出力のため電力ロスが少ない ・平常時にトランスを経由し電圧を安定させる ・停電だけでなく、ちょっとした電圧の乱れにも強い | ・バッテリーとAC電源間の転送時間があるので、オンラインUPSほど信頼性がないかもしれません ・オフライン方式より大きく・重くなる傾向がある |
オフライン | ・3つの方式の中で最も手頃な価格 ・通常時パススルー出力のため電力ロスが少ない | ・停電切り替え時に瞬断を伴う ・切り替え時に電圧変動がやや大きい ・電圧変動が苦手 |
文中に出てくる「商用電源」とは、壁のコンセントからの電気のことです
UPS オンライン方式・常時インバーター方式
- オンライン方式とは?
オンライン(常時インバータ給電)方式とは、商用電源と同期しながらインバータを通して電力を供給するというUPS給電方式。電源が正常なときはインバータによる安定した電力を機器に供給しつつ、蓄電池の充電も行い、異常が起きると蓄電池からの給電に切り替えます。常時インバータを使用するので、蓄電池での給電へ切り替える際のラグもありません。

常にインバーターを通していて、緩衝材のような役割を果たしているため電圧が安定しているのが特徴です。
停電だけでなく、ちょっとした電圧変動にも対応します。
しかし、常にコンバーターとインバーターを稼働することになるため、交流⇄直流の変換に伴う電力効率の低下を避けることができません。
実際には、このオンライン方式は最も優れた方式と言えますが採用しているポータブル電源が少ないです。
オンライン方式を採用しているポータブル電源
UPS ラインインタラクティブ方式
- ラインインタラクティブ方式とは?
ラインインタラクティブ方式とは、AVR(自動電圧調整器)の搭載により、通常時はもちろん、一定範囲の電圧変動が起こった際にも、100Vに近い安定した電力を機器に供給しつつ、蓄電池への充電が行われるという給電方式です。そして、停電などの異常が起こると速やかに蓄電池からの給電に切り替わります。

通常時はオフライン方式と同じく、バッテリーを介さずに電気機器に給電します(次世代パススルー充電)。
しかし、ラインインタラクティブ方式では途中にトランスを挟み込むため、商用電源からの電圧変動に対してある程度の耐性を作ることができます。
停電だけでなく、集合住宅などでの電圧変動に適応するのが大きなメリットです。
オフィス用途でのUPSはラインインタラクティブ方式で十分と言われています。
ポータブル電源でUPSを構築するならば、価格と性能のバランスが取れているこのカテゴリーから選ぶのがおすすめです。
今のところAnker社の製品しかありませんが、どちらも切り替えスピードは20msとなっています。
ラインインタラクティブ方式を採用しているポータブル電源
オフライン方式・常時商用給電方式
- オフライン方式とは?
オフライン方式とは、常時商用給電方式とも呼ばれ、通常時は商用電源をインバータを介さず流しつつ蓄電池の充電も行い、停電等が起きたら蓄電池での給電に切り替えるという方式です。蓄電池給電に切り替わる際に電源の瞬断を伴いますが、極めて短い時間であり、無瞬断が求められる機器でなければ特に問題はありません。

最大のメリットは、構造がシンプルなため、軽量・コンパクトかつ安価にUPSを構築できる点にあります。また、通常時はバッテリーを通さないため電力ロスがないこともメリット。
通常時は次世代パススルー充電でバッテリーを介さずに電気機器に給電。停電時、バッテリーからの給電に切り替える際に瞬断が起きる点がデメリット。とはいえ、家庭用パソコンであれば電源が落ちることはほぼないとのこと。
また、製品によって瞬断時間が異なります。Zendure・SUBUMAは20ms、ASAGAO・EENOURは10msとのこと。Pecronは8ms〜20ms。
停電している商用電源側に逆流してしまうことを防ぐために、商用電源側を切り離す必要があります。このタイミングで瞬断が起きます。この時にノイズや電圧変動が起きやすいと言われています。
ラインインタラクティブ方式との違いは、トランス(変圧器)を通さないため、停電以外のコンセントから受ける電圧変動に対応できない点です。
大規模な集合住宅や商業地帯では停電以外の電圧変動が起きると言われています。
オフライン方式を採用しているポータブル電源


PecronさんはTwitterで回答をくれた唯一のメーカーさんです。SNS運用がおざなりのメーカーが多い中、好感が持てる対応でした!
さいごに:1番のおすすめは「BLUETTI AC500 + B300S」
UPSを導入するメリットとして、「停電や電圧低下時にバックアップ電源を供給することで、継続的な電力供給を実現すること」があります。
主電源が遮断されると、UPSは直ちに内蔵バッテリーに切り替わり、接続された機器に安定した無停電電源装置を提供します。
また、UPSは電圧を調整し、電力サージやスパイクをフィルタリングして、接続された機器に安定した電力を供給することを保証します。これにより、停電時のデータ損失や機器の破損を防ぎ、ビジネスや冷蔵庫などの家電を中断することなく使い続けられます。
UPSによりポータブル電源に電力供給が切り替わった後、復旧するまでの電気容量にも気を使わなければなりません。すぐに回復すればいいのですが、何日もかかる可能性もあります。維持したい機器の消費電力量と維持したい時間を考えて製品を選んでくださいね。
管理人のおすすめは、用途に応じて増設バッテリーを追加できるタイプの製品です。自分が買うなら確実に拡張性のある製品を選びます。
今回ご紹介した製品の中で拡張性を持つものは「Anker 767 Portable Power Station(最大容量4,096Wh)」「BLUETTI AC500&B300S(最大容量18,432Wh)」です。「EcoFlow DELTA Pro」もバッテリーを増設できますが、UPSではなくEPSで切り替え時間が30msということなので除外しました。
もしも予算に制限がないのなら、「BLUETTI AC500&B300S(最大容量18,432Wh)」が最もおすすめです。
2023年のCES(Consumer Electronics Show)でも話題になっていました。全米の中でも優位性を持っているようです。
参考記事:BLUETTI 株式公開!会社概要、信頼性、将来性について詳しく解説
今後、Zendureのホームバックアップ用半固体電池採用ポータブル電源「SuperBase V」が出てくるのですが価格次第では競合になりそう。
まとめとして、UPSは守りたい機器の必要電力量と継続時間を考えて選びましょう。また、増設可能な拡張性を持つ製品の方が、長い目で見ると製品寿命が長くなりコストパフォーマンスに優れているといえます。
