災害が発生した場合、家庭の電気が止まってしまったとき、皆さんはどのように過ごすことになるでしょうか?今回は、そんな時に役立つ防災方法の一つ、バッテリーを使った家庭用電力バックアップについてご紹介します。
バッテリーから自分で構築しなくてもいいようにポータブル電源が生まれたため、使用時におけるメリットやデメリットはほぼ同じとなります。ですが、いくつか固有の長所と短所がありますので、その部分にフォーカスしつつ話を進めていきたいと思います。
当サイトはポータブル電源に特化したサイトですが、様々な電力供給維持の方法を模索する一環としてバッテリーからホームバックアップを構築を行ってみたいと思います。「災害時に辛い思いをしてほしくない」というのが大きな願いです。
今回は三回シリーズで記事を構成しています。
- LiTime社のリン酸鉄リチウムイオンバッテリーで自家製ポータブル電源を作ってみる 計画編(この記事です)
- 実際にバッテリーを使って自家製ポータブル電源を作ってみる
- ソーラーパネルで自家製ポータブル電源に電気を貯める
バッテリーは、LiTime社(旧Ampere Time)の「12V 100Ah LiFePO4 リン酸鉄リチウムイオンバッテリー」を使います。LiTime社の提供品となります(開示は記事最後部にあり)。
この記事は概念的なことや計画に関しての内容となります。正直なところ、こういったバッテリーを扱うのは初めてなので勉強しながら記事を書いています。誤っているところがありましたらコメント欄で教えていただけるとありがたいです。
全然知らないところから始めるので、同じような初心者の方にもわかりやすい記事にしていきたいと思います。
また、実践編や安全対策、パーツ選びは次章で記述致します。
家庭用電力バックアップとは何か?
- 家庭用電力バックアップとは何か?
-
家庭用電力バックアップとは、再生可能エネルギーを利用して発電し、その電力を家庭で消費するために貯蔵する製品のことです。太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー発電システムと組み合わせて使用されることが多く、余剰電力を蓄えることができるため、需要が高まっています。
家庭でのエネルギー消費を最適化し、省エネや環境保護に役立ちます。また、停電時には非常用電源としても利用できるため、災害時の備えにもなります。定置型家庭用エネルギー貯蔵製品とも呼ばれます。
テスラ社のパワーウォールを始め、シャープやパナソニック、東芝ライテックなど多数の企業が参入している成長分野になります。
最近ではポータブル電源大手のEcoFlow、BLUETTI、Zendureなどが北米を舞台にこの分野でしのぎを削っています。北米では日本のように災害後の復旧が早くないこともホームバックアップカテゴリーが盛り上がっている要因かもしれません。何もなくても突然停電したりしますしね。カナダ留学中にかなりびっくりしました。
個人的には、比較的高額になることや故障した時の保証問題、スイッチングコストが高いことなど導入へのハードルが高いと感じます。
メリットとデメリット パーツの入れ替えで高寿命化
バッテリーを使用した家庭用電力バックアップのメリットとデメリットを簡単に説明します。ほとんどポータブル電源と同じになってます。
メリット
- 費用対効果が高いソリューション
- セットアップとメンテナンスが簡単
- 長時間にわたって電力を供給できる(バッテリー容量による)
- 複数の電化製品に電力を供給できる(インバーターによる)
- 壊れたパーツを取り替えることで同じシステムを維持していくことができる
- バッテリーの拡張が容易に可能
- 必要な機能をオーダーメイドで組むことができる
- 電気の知識が付く
デメリット
- バッテリーの取り扱いに注意が必要であり、危険がある
- 最初は仕組みがわからない
- パッケージ化されていないので勉強が必要
- 組み込む機能によっては高額に
- 使用家電によってはインバーターが必要であるため、電力変換が必要
- 大型家電の電源供給ができない場合がある(インバーターによる)
- 家全体をカバーするにはかなりのバッテリーが必要
バッテリーを使用した家庭用電力バックアップは、セットアップとメンテナンスが簡単であることが最大のメリットです。故障したパーツを交換すれば、バッテリーの寿命まで使い続けることができます。
また、自分の用途にぴったり合わせたシステムを構築することができます。
ポータブル電源ですと、バッテリーがリン酸鉄リチウム電池になって高寿命化しても、その他のパーツの寿命が先に来るでしょう。とはいえ、パッケージ化されているので簡単に安全に使える点でバッテリーよりも優位性があります。
使う場所や電力供給する家電に合わせて両者を選択していくのが良いかと思います。
LiTime 12V 100Ah LiFePO4 リン酸鉄リチウムイオンバッテリーのスペックとフォトレビュー

この項では「LiTime 12V 100Ah LiFePO4 リン酸鉄リチウムイオンバッテリー」のスペック情報の記載と画像を使ったフォトレビューを行います。
このバッテリーに使われている「リン酸鉄リチウムイオンバッテリー(LiFePO4)」とは、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)を正極材料とするリチウムイオン二次電池の一種です。
他のリチウムイオン電池と比較して、エネルギー密度が高く、サイクル寿命が長く、安全性が高いという特長を持ちます。また、過熱しにくいため、火災や爆発の危険性も低くなります。
また、このバッテリーには、BMS(過充電保護・過電流保護・過放電保護・短絡保護・過熱保護)が内蔵されています。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリー+BMS内蔵で非常に安全性の高い製品になっていますね。

難しい数字が並んでいますが少しずつ記事の中で解説をしていきます。




外装にはスペック情報などが記載されています。作りはとてもきれいですね。


上部にプラスとマイナスの端子がありプラカバーがついています。
同梱物 説明書・保証書・注意事項・ナット

左上から、製品マニュアル、初心者向けガイド、収納袋、製品カタログと実践例。ポータブル電源でも見ないようなしっかりした資料です。



このネジを上部のマイナス端子・プラス端子につけて使います。




基本的な注意事項のペーパーが入っています。
バッテリー充電器(LiTime 14.6V 10A リン酸鉄リチウムバッテリー専用)

バッテリーを充電する専用充電器。



こちらの製品も説明書がしっかりしていて初心者でも理解ができそうです。

赤と黒のワニクリップをバッテリーに接続、ACアダプターをコンセントに差し込んで充電をします。



アダプターサイズは18.8cm×7.6cm×4.5cm。
電力バックアップ作成計画のポイント 必要なパーツや繋ぎ方
この項ではどの家電を維持するためにシステムを組むか考えてみましょう。
それによって必要なインバーターの出力やソーラーパネルのサイズも変わってきます。
必要なもの
- バッテリー
- インバーター
- ソーラーチャージャーコントローラー
- ソーラーパネル
まず、ソーラーパネルを用いて太陽光を取り込み、ソーラーチャージャーコントローラーを使用してバッテリーに充電します。バッテリーは、インバーターに接続され、家電を駆動するための電力を供給します。これにより、停電時でも家電を使用することができます。
以下はバッテリーで作る電力バックアップのフローチャートです。

この図は、バッテリーがソーラーパネルからの電力供給によって充電され、家電に電力が供給されるプロセスを示しています。
バッテリーで電力をバックアップする設計図を理解した後は、実際に設計するためのステップを確認しましょう。
使用したい(維持したい)家電製品の電力消費量を確認し、使用中の場合と待機中の場合の電力消費量を計算します。
必要な電力消費量を1日あたりで計算し、維持したい日数分のバッテリーの容量を計算します。
バッテリーを充電するために必要なソーラーパネルの必要量を計算します。
適切なソーラーチャージャーコントローラーを選択し、ソーラーパネルからの電力供給を管理します。
家電製品に必要な電力を供給するために、適切な出力性能を持ったインバーターを選択します。
これらのステップに従って、バッテリーで電力をバックアップする設計を実際に行うことができます。
実際の計画について
わたしが組むシステムについてお話しします。この自作ポータブル電源は納屋に設置します。
用途としては、スピーカーとDAC(大音量で音楽を聴くため)、LEDライト、車載冷蔵庫、車載電気ケトル、電気毛布or扇風機、iMac、災害時はエアコンを使いたい、といったところ。
バッテリーの容量は、「1日に必要な量×維持したい日数」のものを選んでください。
例えば、「家族四人の家庭用冷蔵庫(500ℓ)を災害時に2日間維持したい」とします。冷蔵庫の電力消費は家庭全体の15%から20%と言われています。
一般的な家庭用500リットルの冷蔵庫の場合、1日あたりの消費電力量は約1.2kWh〜2.4kWh(1,200Wh〜2,400Wh)程度となります。
設定温度を下げたり、開け閉めを最小限にするなどの工夫で消費電力を抑えることが可能なので2,500Whくらいあれば2,3日は維持できそうですね。
出力は1,000Wあれば十分なので、インバーター「BESTEK 正弦波 インバーター 12V車専用 1,000W MRZ10010AU」を選びました。価格は15,800円。電気ケトルや電子レンジを使いたい方は2,000Wのインバーターを選ぶといいですね。正直、よくわからないブランドばかりで選ぶのに苦労しました。
ソーラーチャージャーは定番の「ALLPOWERS ソーラーチャージャーコントローラー 20A 電流表示バージョン 12V/24V(2,099円)」を選択。
自作ポータブル電源の構成は「LiTimeバッテリー(59,999円)」+「バッテリー充電器(17,999円)」+「インバーター(15,800円)」+「ソーラーチャージャーコントローラー(2,099円)」となります。バッテリーへの電力供給をソーラーパネルだけで考えている方はバッテリー充電器は不要です。
パーツの詳細に関しては次の記事で解説します。
既製品ポータブル電源と自作バッテリーの費用を比較する
実際、自作ポータブル電源はコスト面でお得なのか?
性能が近しい製品と金銭面で比較をしてみましょう。
「リン酸鉄リチウムイオンバッテリー」「容量1,280Wh」「出力1,000W」の3項目の値が近い「Anker 555 Portable Power Station」と、ついでに「Smart Tap ポータブル電源 PowerArQ Pro」の簡易比較です。
製品 | 価格 | 容量 | 出力 | バッテリー |
---|---|---|---|---|
LiTime | 95,897円 | 1,280Wh | 1,000W | リン酸鉄 |
Anker | 149,900円 | 1,024Wh | 1,000W | リン酸鉄 |
SmartTap | 132,000円 | 1,000Wh | 1,000W | 三元系リチウムイオン |
「Anker 555 Portable Power Station」はUPS機能(オンライン方式)など様々な付加価値があります。高額になるのも仕方ないですね。
そういった付加価値の部分がパッケージされた製品が必要であればポータブル電源を選択するのが良いと思います。
単純なシステムでソーラーパネルから電力を生み出して、バッテリーに蓄電し、普段使い・災害用に運用したい方はバッテリーを選ぶのもありだと思える価格差ではないでしょうか。
まとめ:参考文献・資料



わからないことばかりなので色々な媒体から情報を得ました。
まずは書籍の「独立型太陽光発電と家庭蓄電―停電・アウトドア対応 角川浩著」です。
ソーラーパネルでバッテリーを充電して小屋の電力を賄う、といった内容。基礎的なことから記載されているので全体像を把握するのに役立ちました。
体系的に知識を吸収するのは書籍が一番効率がいいですね。
Youtubeでは、「ごっつチャンネルGT-work」さんの動画が初心者としてはわかりやすかったです。
こちらの動画では、実際のバッテリーの扱い方を学びました。やはり動画はわかりやすい。
最後に、バッテリーで電力をバックアップすることで、停電時にも安心して生活することができます。さらに、再生可能エネルギーを活用することで、環境にも貢献することができます。ベランダなどの省スペースでも始めることができますので、バッテリーで電力をバックアップすることを検討してみてください。
開示